近江の城めぐり
第65回 井元城・青山城東近江市
井元城の縄張図。虎口の東側に二つの角馬出を設け、敵兵が虎口へ容易に侵入できないよう防御力をたかめている
井元城の重ね馬出
(東近江市妹町)
「重ね馬出」で防御に工夫
湖東最大の河川、愛知川の上流部は河岸段丘という地形が発達しています。この河岸段丘の右岸側(上流から下流に向かって右側)には集落ごとに城跡が残っています。下流側から上岸本城、鯰江城、井元城、曽根城、青山城、小倉城、高野城と続きます。いずれの城も対岸の北伊勢に通じる八風街道を監視するために在地豪族である小椋氏の一統が造ったとされています。この中で単郭方形城館という、正方形の平地の周りを高い土塁で囲み、さらにその外側を深い空堀で囲むというシンプルな構造を持つ二つの城、井元城と青山城を紹介します。
井元城は妹町の集落にある春日神社の隣、青山城は青山町の集落にある日吉神社の裏山にそれぞれあります。井元城の特徴はその虎口にあります。虎口の外側がコの字形に堀と土塁をめぐらせた角馬出という構造になっていますが、さらにその外側にもう一つの角馬出が設けられた「重ね馬出」となっています。敵兵の虎口への侵入を防ぐ高度な仕組みで、重ね馬出の事例は全国でも珍しいものです。
重ね馬出は1573(元亀4)年4月、六角方の鯰江城を攻撃する際に織田方が造ったという説もありますが、重ね馬出は鯰江城とは反対方向の青山城に向けて造られており、井元城は織田方に対抗した鯰江城の出城と考えた方がよく、六角方が造ったと考えられます。
青山城は単郭方形城館のお手本のような城で、秘密基地のような様相です。三方に回る幅約9m、深さ3.6mの空堀、上辺で幅約7~9m、主郭内敷地から測って約2mの高さとなる土塁は圧巻です。堀の底には障子の桟のように畝が造られ障子堀になっており、土橋を思われる進入路もあります。
これらの城跡の土塁などは、草木が生い茂っていない春先か紅葉の晩秋に訪れるとよく観察できます。付近にはあいとうマーガレットステーション、県平和祈念館、永源寺などがあり、1日かけて満喫できる散策コースとしてお薦めします。
(滋賀県文化財保護課 仲川靖)