近江の城めぐり
第18回 新宮城甲賀市
新宮城跡の主郭部。後方に主郭を囲う土塁が見える
(甲賀市甲南町新治)
甲賀支配の城館群形成
甲賀は忍者の故郷として有名ですが、それは小説や映画の世界のお話で、歴史上は、「甲賀衆」とか「甲賀武士」などの名で呼ばれています。普段は農業で生計を立てているのですが、地域で大きな紛争が起こった時は、武士として活躍します。地域の有力な武士たちは、何かあれば神社などの会所に集まり、相談をしてもめ事の解決に当たることにしていました。さらに甲賀郡全域の武士による自治集団があり、「甲賀郡中惣」と呼んでいました。
集落には、集落を守る中心となる武士が城館を構えて住んでいました。彼らは、地域ごとに三家や五家という単位で連携し、大きな連合体を作っていました。
そのひとつが甲賀市甲南町新治に所在する城館群です。ここは、1キロ四方に15の城が集まる、甲賀でも屈指の「城銀座」のような地域で、荘内三家が支配していた場所です。
荘内三家とは、服部氏、望月氏、倉治氏です。服部氏関連の城には、服部城、寺前城・村雨城、新宮城・新宮支城があります。望月氏関連の城では、柑子や杉谷にある望月村嶋城・望月村嶋支城、望月青木城、望月城・望月支城などがあります。最後の一家が倉治氏関係の城で、同じ新治に倉治城、竹中城を見ることができます。
これらの城は、服部城を囲む小高い丘の上に築かれており、特に寺前城・村雨城、新宮城・新宮支城、望月村嶋城・望月村嶋支城、望月城・望月支城は、同じような形をした二つの城が近接して築かれていて、二つで一つの役割を果たしていたと考えられています。いずれの城も高い土塁で築かれた方形単郭の城館を中心に、周囲に堀切を巡らせ、いくつかの郭を付随させる形をしており、典型的な甲賀の城館の姿を見ることができます。
(滋賀県文化財保護課 木戸雅寿)